主にドイツ語圏の国々で昔から親しまれてきた「Wimmelbuch(ヴィメルブッフ)」と呼ばれる絵本のジャンルがあります。一切の文章がない大判の絵本で、さまざまな場所が見開きいっぱいに、俯瞰で描かれています。
題材となるのは、動物園、空港、美術館など、子どもの好奇心を刺激するような場所。そこには、とにかくたくさんのキャラクターが登場します。
キャラクターたちはみんな、それぞれ思い思いの行動をしており、その様子がところせましと描かれているのが最大の特徴です。Wimmelbuchが特に魅力的なのは、キャラクターたちの織りなすストーリーがとても楽しく、夢に満ちあふれていることです。たとえば、空港のチェックインカウンターに並んでいるのがサンタクロースだったり、屋根裏に小人がいたり、スーツを着たゾウさんが街中を歩いていたり…。
ファンタジックなキャラクターたちに混ざって描かれている普通の人間もまた、「こういう人、いるいる」と思わずクスッとしてしまうような愛すべき人たちばかり。ページを開けば、そこにはワクワクする世界が広がっています。
そんな絵本を、子どもたちは夢中になって覗き込みます。文章はありませんので、文字が読めなくても楽しめます。どんなストーリーを紡ぎ出すのかは子ども次第。想像力をめいっぱい膨らませ、自分だけの物語を語れる、自由な楽しみ方を与えてくれる絵本です。 本場ドイツやスイスなどでは、幼児期の子どもたちの言語力や想像力を育むツールとして、日常的に教育現場で取り入れられています。